猫が必要な栄養素にミネラルがあります。ミネラルの種類には、カルシウム・リン・マグネシウム・ナトリウム・カリウム・塩素などがあります。このミネラルの中のナトリウムと塩素が化合したものを「塩化ナトリウム」といい、塩・食塩とも呼ばれています。

猫にとって塩は、身体を正常に保つために必要な食べ物です。また、塩は猫の体内で作ることができないため、食べ物から摂取する必要があります。そのため、どのキャットフードにも塩が含まれています。

塩は猫の生命維持に欠かせない食べ物のため、適量の塩を摂取することが重要です。しかし、猫の健康状態が悪くなったとき(腎臓病や心臓病など)は、摂取を制限する必要も出てきます。

今回は、塩の働き、必要な塩分濃度、塩分を適正に保つ工夫についてお話します。生命維持になくてはならない塩ですが、状況に応じて、塩を摂取したり、控えたりする必要があります。本記事のポイントを押さえることで、どんな時でも、あなたの猫が適正に塩分を摂取できるようになります。

塩の必要性について

猫の身体にはさまざまな種類のミネラルが必要になります。その中でも、特に重要なミネラルであるナトリウム・塩素の働きについてお話します。

ナトリウムと塩素の働き

ナトリウムと塩素は猫の身体の中で以下のような働きをします。

・身体のphバランス(酸性・アルカリ性)を一定に保つ

ph値は、0~14までの数値で表されます。真ん中の7が中性で、それより下が酸性、上がアルカリ性になります。猫にとっての理想は、数値6.0~6.4の「弱酸性」です。

ただ、一日中ベストな状態が続いているわけではありません。食後は胃酸が出るため、phはアルカリ性になります。一方、寝ているときはおしっこが濃くなるため酸性になります。また、運動をした後も、身体の中に乳酸が作られるため酸性になります。

このように、身体のph値は、アルカリ性に傾くときもあれば、酸性に傾くときもあります。phが酸性であれば、マグネシウムやリンは強い酸に溶けて尿と一緒に体外へ排出されます。

一方、phがアルカリ性の状態であれば、マグネシウムやリンが結晶になり、どんどん大きくなると、尿路感染症であるストラバイト結石になります。アルカリ性の尿では、マグネシウムやリンが尿に溶けることはありません。

猫は生きるために、「食べる、運動する、寝る」という行動を繰り返します。その活動中に体内のphは常に変化します。そのため、猫の身体のphバランスを弱酸性に維持する塩は欠かせないミネラルです。

・体内の水分バランスを調整する

カリウムとナトリウムの二つのミネラルは、セットになって猫の身体の中の水分量を調節しています。ナトリウムは身体に水分をため込む働きをします。一方、カリウムはため込まれた水分を取り除く働きをします。

もし、ナトリウムを摂り過ぎてしまった場合でも、カリウムが相応に摂れていれば、尿として排出されるため体内の水分バランスは適正に保つことができます。

ただ、猫が高齢になり心臓病や腎臓病を患うことになれば、ナトリウムの摂取を制限する必要があります。そのようなときは、動物病院の医師と相談しながら、療法食を決めましょう。

・栄養の吸収を助ける

小腸で消化された栄養素は、ナトリウムの働きで血管の中に送られます。

・神経の情報伝達・筋肉の収縮を正常にする

細胞内側のカリウムと外側のナトリウムが相互に移動することで電流が発生します。筋肉は電流を信号として受け取ることで、正常な収縮をすることができます。もし、ナトリウムが欠乏すると、筋肉の動きに支障が出たり、食欲が低下したりします。また、皮膚の乾燥・脱毛を招きます。

・消化促進する作用

塩素は胃液の成分である塩酸をつくります。胃液を酸性に保ち、胃の中の食物を殺菌したり、食物を消化したりします。もし、不足したときは、胃酸の酸性度が低下してしまい、食べ物がスムーズに消化されません。その結果、胃もたれや食欲不振などの症状があらわれます。

塩分の役割

このように、塩分は身体を正常に動かすための必要なミネラルです。

しかし、先に述べた通り、塩分は、適量でなければ猫にとって毒になります。過剰摂取でも摂取不足でもいけません。

そのため、適切な塩分濃度に調整されている良質なキャットフードを選ぶ必要があります。良質なキャットフードを選ぶには、まずは猫に必要な塩分濃度を知る必要があります。

ちなみに、野生の猫は、食事で調理したものを食べていないため、塩分を摂る必要はないのではないか?という意見があります。ただ、野生の猫は鳥やネズミを捕食したときに血液を飲んだり、肉を食べたりした際に必要な塩分が得られるようになっています。野生の猫は塩分を摂っていないように見えますが、必要量はしっかり摂取できる仕組みになっています。

猫に必要な塩分濃度とは

塩は猫の身体を正常に保つため、あらゆる部分で必要となる主要ミネラルです。では、猫が一日に必要な塩分とは、実際どの程度の量なのでしょうか。

猫に実際に必要な塩分の計算式は、以下の2つの式から算出することができます。

・1日に必要なナトリウムの摂取量=「3.1mg(ナトリウム量)」×「1日の必要な摂取カロリー」

・猫が1日に必要な塩分濃度=「1日に必要なナトリウム摂取量」×2.54÷1000

以下はキャットフードのパッケージの写真です。猫が1日に食べる量の記載があります。この条件を基に、1日に必要な塩分量を計算してみましょう。

体重4㎏の猫(上記の写真の標準体型の猫で計算を行います。53g=210kCal)

・3.1mg×210kcal=651mg

・651mg×2.54÷1000=1.65g

体重5kgの猫(上記の写真の標準体型の猫で計算を行います。62g=245kCal)

・3.1mg×245kcal=760mg

・760mg×2.54÷1000=1.93g

上記の式に従えば、体重4㎏の猫が1日に必要な塩分量は1.65g、体重5㎏の猫が1日に必要な塩分量は1.93gになります。つまり、塩分量の目安としては、1日に1.5g~2g以上の塩分は猫の身体に過剰であることが分かります。

一方、AAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準では、0.2%以上の塩分でキャットフードを作るよう基準が設けられています。AAFCOの定めた栄養基準は、キャットフードを作る上でスタンダード(標準)となります。

さて、では0.2%の塩分とは、実際は何グラムほどになるのでしょうか。上記と同じ条件で計算してみましょう。

体重4㎏の猫(1日に給与される量:53g)

・1日のナトリウム摂取量:53g×0.2%=0.11g

・1日の塩分濃度:0.11g×2.54=0.279g

体重5kgの猫(1日に給与される量:62g)

・1日のナトリウム摂取量:62g×0.2%=0.12g

・1日の塩分濃度:0.12g×2.54=0.31g

つまり、AAFCO基準と「猫が1日に必要とされる塩分量」の両方を合わせると、以下が猫にとって必要な塩分の基準となります。

・体重4㎏の猫が1日に摂取する塩分濃度:0.279g~1.65g

・体重5kgの猫が1日に摂取する塩分濃度:0.31g~1.93g

あなたの飼い猫に与えているキャットフードの塩分量が上記の範囲内であれば、適量だと判断できます。塩分量が気になる場合は、上記の式に当てはめてチェックしてみると良いでしょう。

塩分濃度のチェックについて

ここまで読めば、猫が1日に必要とする塩分量がわかります。次は、キャットフードにどのくらいの塩分が含まれているかのチェック方法についてお話します。

キャットフードの成分表をもとに、どのくらいの塩分が含まれているのか計算をしてみましょう。

ヒルズ・サイエンス・ダイエット(14歳以上用)

まずは、ペットフードの販売メーカーである、日本ヒルズ・コルゲート(以下ヒルズ)が提供している「ヒルズ・サイエンス・ダイエット」についてです。

キャットフードの成分表示は以下の通りです。

表示のナトリウム量は、0.45%以下となっています。しかし、猫のことを本気で考えているのであれば、より正しい数値の確認をするべきです。実際に私が「ヒルズお客様相談室」で確認を取ったところ、正確なナトリウム含有量は0.29%でした。

それでは、これらの情報を基にナトリウム摂取量を算出します。

体重4㎏の猫(1日に給与されるキャットフードの量:53g)

・1日のナトリウム摂取量:53g×0.29%=0.154g

ただ、ナトリウム量は塩の量とは同じではないため、以下の2つのうちどちらかの計算式で塩分量を計算します。

1.ナトリウム量(mg)×2.54÷1000=塩分量(mg)

2.ナトリウム量(g)×2.54=塩分量(g)

上記の1の計算式で算出した1日の塩分濃度:0.154g×2.54=0.39g

実際の塩分量は約0.39gでした。先に猫に必要な塩分量の項目では、体重4㎏の猫に対して、1日の塩分量が1.65gでした。この塩分量の差について、「ヒルズお客様センター」に問い合わせてみました。

ヒルズのキャットフードは、成猫から老齢猫まで一貫してキャットフードの塩分量を控えたものになっています。あなたの猫に塩分控えめのキャットフードを与えたい場合、ヒルズの商品がおすすめです。

ロイヤルカナン

次は、「ロイヤルカナン」というペットフード販売会社についてです。

ロイヤルカナンのキャットフードの場合、ヒルズのキャットフードと比較すると塩分量の多いタイプがあります。ただ、高齢猫用のものは、腎臓に負担を掛けないために塩分量は控えてあります。以下に2つのキャットフードを紹介します。

12歳以上の高齢猫用 エイジング12プラス

高齢猫のために作られたキャットフードです。高齢猫になると腎臓病になるリスクが高くなります。腎臓に負担にならないよう、リン、マグネシウム、ナトリウムを控えたキャットフードであることが特長です。実際の塩分量は以下のとおりです。

ナトリウム含有量:0.3%

キャットフードのパッケージにはナトリウムの含有率表示はありません。ロイヤルカナンのホームページの成分比較表で確認しました。

次に、以下の「12歳以上の高齢猫用エイジング12プラス」のパッケージの記載から、猫が1日にどのくらいの塩分を摂取しているのかを計算していきましょう。

上記のナトリウム含有量(0.3%)から、1日に摂取するべきナトリウムと塩分を導く計算式は以下の通りです。

体重4㎏の猫(1日に給与されるキャットフードの量:51g)

1日のナトリウム摂取量:51g×0.3%=0.153g

1日の塩分濃度:0.153g×2.54=0.388g

ユリナリーケア

1歳の成猫以上を対象としたキャットフードです。キャットフードは一般的に塩分を控えたものが多くありますが、このキャットフードに含まれている塩分量は、減塩タイプのキャットフードと比較すると塩分が多く含まれているのが特長です。実際の塩分量については、以下のとおりです。

ナトリウム含有量:0.7%

「12歳以上の高齢猫用 エイジングプラス」と同様に、ホームページの成分比較表で確認しました。

次に、以下の「ユリナリーケア」のパッケージの記載から、猫が1日にどのくらいの塩分を摂取しているのかを計算していきましょう。

上記のナトリウム含有量(0.7%)から、1日に摂取するべきナトリウムと塩分を導く計算式は以下の通りです。

体重4㎏の猫(1日に給与されるキャットフードの量:55g)

1日のナトリウム摂取量:55g×0.7%=0.385g

1日の塩分濃度:0.385g×2.54=0.978g

55gのキャットフードの中に、「12歳以上用の高齢猫キャットフードの塩分」は0.388gでした。一方、「ユリナリーケア」のキャットフードに含まれる塩分量は0.978gであり、比較すると約2.5倍の量になっています。

先に述べた「体重4㎏の猫への必要な塩分量」では、1日に1.65gまでが適量だと計算しました。そのため、0.978gの塩分量は、身体が健康な猫にとっては問題になる量ではありません。

キャットフードは塩分が控えめなものが多い中、なぜ「ユリナリーケア」のキャットフードの塩分は多めに作られているのでしょうか。それは、猫に水を飲んでもらうためです。

猫の先祖は砂漠に住んでいたため、水をあまり飲まなくても生活することができます。そのため、猫は摂取する水分が少なくなりがちです。水分の摂取が少ないと、猫は尿が濃くなり、膀胱や腎臓にミネラル(リンやマグネシウム)の結石ができやすい身体になってしまいます。

猫が高齢になるにつれて、腎臓病、膀胱炎になりやすくなるのは、このような理由があるためです。この問題を解決するために大事なことは、猫に十分な水を飲ませることです。そうすることで、猫の尿の中のミネラル(マグネシウム・リン)を速やかに体外へ排出することができます。

つまり、「ユリナリーケア」が、塩分多めに作られている理由としては、塩気が猫の喉の渇きを促し、水を飲むようにするためです。もし、あなたの猫が水を飲まないことで悩んでいたら、このキャットフードがおすすめです。

ただ、猫の腎臓の値が高い等の体調に問題がある場合、おすすめできません。

ロイヤルカナンのキャットフードは、「塩分を控えたもの」「塩分が多めのもの」のバリエーションが豊富です。塩分は適量を摂取することで、身体を正常に保ちます。減塩にばかり目を向けるのではなく、季節ごとに猫の様子を確認しながらキャットフードを選ぶことが重要になります。

まとめ

猫にとって塩分は身体を正常に動かすために、非常に重要なミネラルです。塩分は摂取不足でも、過剰摂取でもいけません。そのため、猫にとっての適量を知っておく必要があります。

猫が1日に必要な塩分量の目安は、体重4㎏の猫の場合は0.279g~1.65g、体重5kgの猫の場合は0.31g~1.93gです。キャットフードのパッケージのナトリウムという表示を確認し、実際どのくらいの塩分を摂取しているのかを計算してみると良いでしょう。

一般的なキャットフードの製造メーカーの塩分量を比較すると、それぞれ特長があります。まず、ヒルズのキャットフードの塩分量は、成猫~高齢猫用まで一貫して塩分が控えめに作られています。

一方、ロイヤルカナンのキャットフードでは、高齢猫用が塩分控えめに作られています。1歳以上の成猫以上用では、高齢猫用に比べ約2.5倍の塩分が踏まれている「ユリナリーケア」というキャットフードがあります。

塩分多めに作られているからくりとしては、塩分を多く摂ることで水をたくさん飲むようにするためです。猫によっては、水を飲む量が極端に少ないため、腎臓や膀胱に尿結石ができることがあります。水を多く飲むことで、結石になる前に体外に排出することができます。

冬場は寒いため、一般的に猫は水を飲む量が減ります。そんなとき、「ユリナリーケア」を与えると水を飲むようになります。これにより、猫の腎臓や膀胱の結石予防になります。

あなたの猫に与えるキャットフードの塩分量をチェックしておけば、猫の様子や体調を見ながら、状況ごとにあったキャットフードを与えることができます。

塩分控えめのものばかりを選ぶのではなく、バランスを見ながら調整することで、猫に起こりがちな腎臓や膀胱結石の予防になります。