猫がしなやかに軽々と動く様子は美しいものです。一方、ぽっちゃり体型の猫がコロコロと動く様子は、可愛らしさが溢れています。どちらも多様な猫の魅力です。ただ、可愛らしいからと言って、ぽっちゃりの肥満体型を放置しておくと、猫が病気になるリスクが高まります。

「肥満は万病の素」というのは、人間同様に猫にもあてはまります。つまり、猫は、個々の猫にとっての適性体重を維持することができれば、健康に長生きすることができます。

ただ、猫にとっての適正体重の維持はなかなか難しいのが現実です。理由は、生後1年程で、ほとんどの猫は、去勢・避妊をします。その結果、ホルモンが乱れ食欲が増えたり、発情期が無くなることで代謝が低下して太ったりするからです。

今回は、猫の肥満が引き起こす病気と肥満対策についてお話します。この記事を読むことで、あなたの猫が肥満しているならば、食事と運動をバランス良く管理しながら猫のダイエットを成功させることができます。

猫の肥満の原因

猫は、去勢・避妊手術の後、とても太りやすい状態になります。去勢・避妊の手術をした後、なぜ太りやすくなるのでしょうか。原因は、以下の3点が挙げられます。

去勢・避妊手術の後に代謝が減る

猫が去勢・避妊手術を行う理由に、発情期の問題を回避することが挙げられます。猫は発情期になると、大声で鳴いたり、異性を求めて外に出たり、家の中の壁や家具におしっこを掛けるマーキング行為をしたりと困った行動が増えます。

この発情行為には猫の総消費カロリーのうちの30%が使われています。つまり、去勢・避妊手術をすると、発情行動が無くなるため、その時点で必要とされた30%の消費カロリーが不要になります。そのため、避妊・去勢手術の前と後で同じカロリーの食事をした場合、どんどん太ってしまいます。

食べすぎで太る

去勢・避妊手術をした後、1日に朝と夜の2回にわけて必要なキャットフードを与え、間食をしないように徹底していれば食べすぎることはありません。ただ、去勢・避妊手術をした後、猫によっては、食欲が増してやたらと食べ物をせがむようになります。

猫の乞う姿に負けてしまった飼い主は、ダメだとわかっていても少しだけ与えるのなら問題はないだろうと思ってキャットフードを与えてしまいます。そして、気が付いたときには、太り過ぎの猫になっていることは良くあることです。

その後、飼い主は猫にねだられてもキャットフードを与えないように注意しますが、もらえるものと信じている猫の習慣を変えることはとても難しいのが現実です。このようなことが起こらないよう、与えるキャットフードの量を守るようにしましょう。

運動不足で太る

猫は運動不足により太ることがあります。去勢・避妊手術の後、猫は、活発に動くことが少なくなり、寝ていることが多くなります。多頭飼いであれば、猫同士で遊ぶこともありますが、1匹だけの場合、飼い主が積極的に遊びに誘わなければゴロゴロして過ごし、運動不足になります。

肥満が原因の病気

このように、避妊・去勢手術を行ったあとの猫はさまざまな原因から太りやすくなります。肥満を放置しておくと、重い病気を発症することにつながります。

肥満が原因で発症する主な病気は以下の3つです。

【心臓疾患】

心臓は身体全体に血液を回すためのポンプの役割をしています。そのため、体重が重くなれば、身体の隅々まで血液を届ける範囲が広がるため、心臓への負担が増すことで心臓疾患を発症します。

【糖尿病】

猫が活動するために必要なエネルギーにブドウ糖があります。ブドウ糖をエネルギーとして活用するためには、膵臓(すいぞう)から出るインスリンというホルモンに助けてもらいます。ただ、肥満することでインスリンが出にくい状態になり、ブドウ糖をエネルギーとして活用することができなくなります。その結果、尿にブドウ糖が漏れ出してしまう病気が糖尿病です。

肥満している猫は、標準体重の猫に比べ糖尿病を発症するリスクが約4倍あります。また、糖尿病は、さまざまな合併症を引き起こすこともあるため、非常に恐ろしい病気です。

【関節炎】

肥満することで、手足の関節や骨を支えるじん帯に負担がかかります。そのため猫は、関節炎を患うことになります。関節炎は痛みを伴うため、活動量が減り、カロリーを消費することができなくなります。その結果、ますます体重が増えてしまうという悪循環を招くことになります。

猫の適正体重とは

猫が肥満する原因や、肥満が原因となる病気についてお話をしてきました。続いては、「猫の適正体重」についてお話しします。猫は個体ごとに体格・骨格が違うため、適正体重とはどの程度の重さを指すのかを知る必要があります。

まず、猫の一般的な適正体重は、生後1年目になったときの体重が基準になります。このころの猫は、十分な栄養を得て身体が成熟しています。また、筋肉も発達しているため、理想的な身体ができあがっています。

もし、あなたの猫の生後1年目の体重を測っていないようであれば、当時の写真で今の体形との違いを確認してみましょう。そうすることで、ある程度の体重を推測することができます。また、掛かりつけの動物病院があれば、当時の体重を聞いてみると教えてもらえるはずです。

ここまでで、「適正体重=生後1年目体重」ということがわかりました。では一体、どのくらい体重が増えると肥満になるのでしょうか。あなたの猫が肥満ぎみであるかどうかを確認するために、以下の式で計算することができます。

適正体重の上限=あなたの猫の生後1年目の体重(㎏)×1.15

生後1年目の体重から15%以上太ると「肥満」になります。例えば、生後1年目の体重が4㎏であれば、4㎏×1.15=4.6㎏以上になると肥満です。4㎏~4.6㎏の範囲であれば問題ありません。

もし、あなたの猫が適正体重を大幅に超えているのであれば、今は病気を発症していなくても将来的に病気になる可能性があります。なるべく早めにダイエットを始めた方が良いでしょう。

一方、もしあなたの猫が適正体重の範囲内なのであれば、その体重を維持できるようにしましょう。

肥満対策について

あなたの猫が適正体重の上限を大幅に超えているようなら、病気になるリスクが高まっています。猫が健康で長生きして欲しいと思うのであれば、早めにダイエットを始めましょう。ただ、猫は身体が小さいため急激に食べる量を減らしたり、無理な運動を行うと、体調を壊すことがあります。焦らず、時間を掛けてダイエットに取り組むようにしましょう。

猫のダイエットのポイントは以下の2つです。

長期計画で行う

目標となる体重は、「生後1年の体重×1.15」以内です。なるべくなら、体重は1~2週間に1回は測り、体重を急激に減らすことがないようにしましょう。

体重の測り方は、以下の手順で行うのが簡単です。

1.家庭用体重計に飼い主が乗り体重を測る。

2.猫を抱いて飼い主と一緒に体重計を測る。

3.上記2の体重-上記1の体重=猫の体重

体重は、1週間で1~2%、1か月で5~8%を目安にダイエットできれば上々です。焦って体重を減らすのは、猫の身体にとってストレスを与えることになります。また、食べる量が減ると、便秘になることもありますので気をつけましょう。

では次に、実際1週間に1~2%のダイエットが順調にいった場合のお話しします。

・生後1年目の体重が4㎏の猫の場合(適正体重:4㎏×1.15=4.6㎏)

例えば、現在の体重が5.5㎏と6.5㎏の場合、順調に毎週2%ずつ減量したときにどのくらいの期間がかかるのかを以下の表にまとめました。

5.5㎏の猫 6.5㎏の猫
1か月 1週目 ▲110g
(5.39㎏)
▲130g
(6.37㎏)
2週目 ▲220g
(5.28㎏)
▲260g
(6.24㎏)
3週目 ▲330g
(5.17㎏)
▲390g
(6.11㎏)
4週目 ▲440g
(5.06㎏)
▲520g
(5.98㎏)
2か月 5週目 ▲550g
(4.95㎏)
▲650g
(5.85㎏)
6週目 ▲660g
(4.84㎏)
▲780g
(5.72㎏)
7週目 ▲770g
(4.73㎏)
▲910g
(5.59㎏)
8週目 ▲880g
(4.62㎏)
▲1040g
(5.46㎏)
3か月 9週目 ▲990g
(4.51㎏)
▲1170g
(5.33㎏)
10週目 ▲1300g
(5.20㎏)
11週目 ▲1430g
(5.07㎏)
12週目 ▲1560g
(4.94㎏)
4か月 13週目 ▲1690g
(4.81㎏)
14週目 ▲1820g
(4.68㎏)
15週目 ▲1950g
(4.55㎏)

上記の表より、現在の体重が5.5㎏であれば、9週間で適正体重の4.51㎏を達成することができます。また、現在の体重が6.5㎏であれば、15週間で適正体重の4.55㎏を達成することができます。

ただ、上記の例は順調にダイエットできた場合です。なかなか減らない場合を加味すると、現在の体重が5.5㎏であれば9~18週間(ほぼ4か月)、現在の体重が6.5㎏であれば15~30週間(ほぼ8か月)ぐらいをダイエット期間として計画しておけば、猫の身体に負担を掛けることはないでしょう。

食事と運動をバランス良く行う

ダイエットを成功させるために大事なことは、食事と運動のバランスが取れていることです。では、食事と運動のバランスが良いというのはどのような場合をいうのでしょうか。それぞれについて考えてみましょう。

まず、運動は、猫の身体の筋肉量を増やし、太りにくい体質を作ることができます。筋肉が適度につけば、内臓の働きや血流が良くなり代謝が増えます。

次に、食事は、ダイエットに適したキャットフードを選ぶことが大事です。適したもの一つに「カルニチン」「ビタミンB1、B2」が含まれたキャットフードがあります。これらは、脂肪を燃焼し、筋肉を作る栄養素です。

健康的にダイエットを行うためには、運動と食事のバランスが重要です。運動と食事の両方で猫の筋肉量を増やすことができれば、適正体重へのダイエットが成功したあと、体重を維持するのも楽になります。

食事によるダイエット

ここでは、ダイエットを始める際のフード選びについてお話します。まず、キャットフードには、ドライタイプ、ウェットタイプの2種類があります。これらのフードにはどのような違いがあるのでしょうか。

ドライタイプは、水分量が10%以下に作られています。1粒にギュっと栄養が詰まっているため、1日に食べる量が少ないのが特徴です。ただ、ダイエットをする際は、摂取カロリーを減らすため、ドライタイプのみでは、食べたという満足感が得られないことがあります。

一方、ウェットタイプは、水分量が80%以上に作られています。その分カロリーが低く抑えてあるため、十分な量を食べたとしても、食べすぎることはありません。たっぷり食べて満足感を得ていながら、実はカロリーを控えることができます。

つまり、ダイエットをする際は、毎日の食事をドライフードからウェットフードに全て切り替えてしまうか、ドライフードとウェットフードを半分ずつにして与えるかのどちらかを取り入れることをおすすめします。

ドライフードのみでダイエットをすると、今まで食べていた量を少し減らすことになります。そうなると、猫にとって物足りなさによるストレスを感じることもあるでしょう。猫が食事の満足感を得られるような工夫をしてあげることは重要です。

ダイエットに適したキャットフードの条件

カロリー控えめのダイエット用フードにもさまざまなものがあります。特長としては、通常よりも多めの食物繊維が含まれることで全体のカロリーを控えるように工夫されています。

栄養成分には、カルチニン、ビタミンB1、ビタミンB2が含まれているものは、ダイエットに適しています。なぜならば、カルチニン、ビタミンB1、ビタミンB2には共通して脂肪燃焼を高め、筋肉を作る栄養素だからです。

ダイエットに適したキャットフードを選ぶことで、猫が満腹感を得ながら、脂肪燃焼を高めることができます。結果的に、無理なくダイエットを成功させることができます。

ダイエットにおすすめのキャットフード

では、実際にダイエットに適したキャットフードを紹介します。

まず、ウェットタイプのキャットフードでおすすめのものは以下のロイヤルカナン「ウルトラ・ライト」です。

「ウルトラ・ライト」には、カルチニン、ビタミンB1、ビタミンB2がしっかり含まれています。ビタミンB1、B2が効率よく働くためには、豊富なミネラルが必要ですが、その点も心配はありません。そして、気になる1袋85gあたりのカロリーは、57kCalです。通常のものよりも19%カロリーオフになっています。

では、1日あたり猫が食べられる量はどのくらいなのでしょうか。以下が1日あたりの食事の目安です。

85gの中身は以下の通りです。

実際にウルトラ・ライトを食事として与えた場合は以下のようになります。ちなみに、以下の内容は、「体重4㎏あたりの猫に与えるキャットフードの量」として考えた場合になります。

ウェットフードのみを与えた場合

・ウルトラ・ライト 3袋と1/4⇒57kCal×3袋1/4=185kCal

ウェットフードとドライフードの両方を与える場合

・ウルトラ・ライト 1袋⇒57kCal

・ドライフード  185kCal-57kCal=128kCal

ドライフードは、与えるカロリーが128~130kCalになるよう、キャットフードのパッケージを確認して量を調整しましょう。

上記のドライフードの量は約34gです。

どのくらいの量が128~130kCalになるかは、以下のようにキャットフードのパッケージで確認をします。

上記の写真では、100g=376kCalになっています。

・128kCal÷376kCal=0.34

・100g×0.34=34g

上記の計算により、ウェットフード1袋とドライフード34gが1日の食事の適量であると分かります。

続いて、「体重5㎏あたりの猫に与えるキャットフードの量」のパターンも算出してみます。

ウェットフードのみを与えた場合

・ウルトラ・ライト 4袋⇒57kCal×4袋=228kCal

ウェットフードとドライフードの両方を与える場合

・ウルトラ・ライト 2袋⇒57kCal×2袋=114kCal

・ドライフード  228kCal-114kCal=114kCal

ドライフードは、与えるカロリーが114~120kCalになるよう、キャットフードのパッケージを確認して量を調整しましょう。

上の写真のドライフードは30gになります。前述のキャットフードと同様に100g=376kCalです。

・114kCal÷376kCal=0.30

・100g×0.30=30g

上記の計算により、ウェットフード2袋とドライフード30gが1日の食事の量と算出できます。

おすすめは、ウェットフードとドライフードの両方を与えるやり方です。あなたの猫がいつも食べなれているドライフードの量を控え、ウェットフードを追加することで、食べる量が増えます。また、ウェットフードは、ゆっくり食べることになるため、満腹感を得られます。

ただ、猫は好き嫌いがあるため、ウェットフードの食感に慣れるまで食べようとしないことがあります。最初のうちは、1日で半分だけ与えてみるなど、様子をみながら始めてみましょう。

ウェットフードの注意点

ウェットフードは人間の食べ物で言うところの「お刺身」です。生もので防腐剤は含まれていません。そのため、20分~30分すると腐り出します。特に梅雨や夏などの食べ物が傷みやすい時期は、出しっ放しに注意しましょう。もし、悪くなったウェットフードを猫が食べてしまったら、下痢・嘔吐(おうと)を引き起こす可能性があります。

また、1袋のウェットフードを2回に分けて与える場合、残りの半分は開封口をしっかり密閉して、すぐに冷蔵庫で保管しましょう。以下は、密閉したパウチのキャットフードです。

開封口はしっかり密閉しましょう。開封口が開いていると、キャットフードの表面が乾き、せっかくの風味が飛んでしまいます。猫は、嗅覚で美味しいか、まずいかを判断します。そのため時間が経過することで表面が乾燥し、風味が損なわれたキャットフードは食べません。新鮮さを失わないことはとても重要です。

運動によるダイエット

運動をすることで猫の消費カロリーを増やすことができます。飼い主は、猫と遊んであげる時間を増やすようにしましょう。猫は、短期集中型のため、1回に10~15分程度で十分です。1日に2~3回遊んであげましょう。

猫を遊びに誘うタイミングは、食事の前が適しています。なぜなら、野生の猫が狩猟をして食べ物を得るという猫の本来の姿に近いシュチュエーションと重なるからです。反対に、食事の後すぐに遊びに誘うのは、猫の消化に悪影響を与えるため止めましょう。

猫は、広い場所を走り回る環境よりも、狭い場所であっても上下運動ができる環境の方が良いです。なぜなら、猫は跳躍力(ちょうやくりょく)が優れた動物のため、高さがいろいろある場所の方が全身の筋肉をくまなく使うことができるからです。

以下のようなキャットタワーであれば、狭い場所でも上下運動が可能です。

上記の商品の大きさは、横幅57㎝、奥行45㎝、高さ52㎝、重さ18㎏です。とてもコンパクトなため部屋に置いても、威圧感を感じない大きさです。その他にもさまざまな大きさやタイプがあります。

また、階段でボールを落としたり、上に投げたりして上下運動をさせましょう。獲物になるボールを追いかけて、猫が階段を上ったり下ったりすれば十分な運動ができます。

ただ、「7歳以上の高齢猫」「生後1年目の体重×1.15以上の肥満猫」は激しい運動をすると、関節や心臓に負担を掛けることがあります。猫の様子を観察しながら、運動を取り入れるようにしましょう。最初は1日5分程度を2~3回できれば十分です。

運動を毎日続けることで、猫の身体は筋肉量が増し、脂肪が付きにくくなります。少しずつ無理をせず続けましょう。

まとめ

家の中で猫を飼う場合、去勢・避妊手術はほとんどの猫が行います。しかし、手術をすることで、消費カロリーが30%も少なくなってしまいます。また、ホルモンバランスが乱れ太りやすくなるため、去勢・避妊手術後は肥満に注意しなくてはなりません。

肥満は、糖尿病・心臓疾患・関節病などの病気を招きます。猫の適正体重を知り、維持するように心がけましょう。

猫の適正体重は、生後1年後の体重です。身体が成熟し、筋肉で引き締まった時期になります。この時期の体重は猫が健康に過ごすための目安となる大事な数字です。必ず調べるようにしましょう。

「適正体重の上限=あなたの猫の生後1年後の体重×1.15」です。この体重の範囲で維持するようにしましょう。

適正体重の上限を超えている場合、猫のダイエットを始めましょう。運動と食事のバランスを取り、筋肉量を増やし脂肪の付きにくい身体を目指しましょう。運動は上下運動が効果的です。食事は、「カルニチン」が含まれたキャットフードを選ぶと良いでしょう。

運動と食事をしっかり管理すれば、ダイエットは成功します。短期的にダイエットを成功させることを考えるよりも、良い習慣を作りながら、気長にダイエットに取り組みましょう。