7歳以上のシニア猫になれば、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)という病気に注意が必要です。我が家のオス猫も15歳になったときに、甲状腺機能亢進症を発症しました。

甲状腺機能抗促進症という病気は、ホルモンの病気で原因がはっきりしていません。そのため、病気に一度かかってしまうと、一生治療を続けなくてはならないというネガティブなイメージがあり、病気の診断された当初は、信じたくない気持ちや不安な気持ちで一杯でした。

しかし、愛猫が病気に罹ったという事実を受け入れるようにし、治療を適切に行うことで、愛猫の症状も安定した状態になり、思っていたほど怖い病気ではないと感じることができました。

甲状腺機能抗促進症は、猫が高齢になればなるほど罹りやすくなります。早めに発見し、適正なケアをすることで、深刻な症状に陥ることなく、病気の進行をゆるやかに抑えることができます。

甲状腺機能亢進症は、発症すると一生涯つきあう病気なので、気長に愛猫の体調をみながら続けることになります。今回のお話は、病気の症状や注意点と、この病気に適した「低ヨウ素のキャットフード」についてお話します。

猫の甲状腺機能亢進症と症状

猫が7歳以上のシニア期になると気をつけたい病気が「甲状腺機能亢進症」です。7歳以上は、7.9~10.5%、13歳以上では11.8~18.5%の猫がかかっています。病気の原因はわかりませんが高齢になればなるほど罹りやすい病気です。

身体の代謝を活発にする甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで起こる病気であり、具体的な症状は以下のようなものがあります。

・たくさん食べるのに痩せてきた

・高齢猫なのに活発に動く

・そわそわ落ち着きがない

・鳴いて走り回る

・興奮しやすく、攻撃的になる

・水をたくさん飲む

・尿の量が増える

・下痢をする

・毛並がバサバサになる

甲状腺は、猫の喉のあたりの左右両側にある器官です。実際の場所は以下の通りです。

猫のあごから喉に掛けての部分に甲状腺はあります。猫が気持ちの良いときに喉をゴロゴロと喉を鳴らす音が聞こえてくる部分の近くに甲状腺があります。

甲状腺機能亢進症は、甲状腺でホルモンが過剰に作られるため、甲状腺自体が大きくなります。そのため、飼い主がたまたま愛猫のあごからのどを撫でていたときに、「腫れ」を感じることがあるかもしれません。

しかし、甲状腺の付き方は、猫により個体差があります。そのため、甲状腺がのどの奥まった場所についている場合は、のどを触っても「腫れ」を感じにくいばあいもあります。

我が家の猫も、獣医師の触診(しょくしん)では、目立った「腫れ」が感じられず、MRIで甲状腺の状態を確認することにしました。その結果、左右2つある甲状腺の右側が通常の2倍の大きさになっていました。

甲状腺は、甲状腺ホルモンを分泌し、身体全体の細胞を活発に働かせる役割があります。甲状腺ホルモンの原材料は、海藻(かいそう)に含まれるヨウ素(ヨード)から作られます。正常であれば、身体が必要としている量だけ作られます。

しかし、甲状腺機能亢進症になると、必要以上の甲状腺ホルモンを作ってしまいます。そうなると、新陳代謝が活発になり過ぎて、心臓がいつもドキドキしていたり、胃腸が働きすぎて食欲が増したりします。

高齢になれば寝ていることが多くなる猫ですが、ソワソワ落ち着きがなくなり、やたらに動きまわったりと、一見元気そうに感じられることでしょう。

しかし、このような状態を放置しておくことはとても危険です。なぜなら、心臓がバクバクと働きすぎになり「心肥大」を引き起こす原因になります。また、消化器官が働きすぎて、消化→栄養吸収→排泄という通常サイクルが消化→排泄というサイクルに短縮化され、どんどん痩せこけてしまいます。

このように、栄養を摂らずに身体を動かし続けると、まったく栄養が摂れない状態となり、最後は燃え尽きたようになって死んでしまいます。甲状腺機能亢進症は、放置することが怖い結果を招くことになります。

「ちょっと元気すぎるな?」と感じたら、早めに動物病院で検査をしてもらい、早めに治療を始めることが何よりも大切です。

猫の甲状腺機能亢進症の原因

甲状腺機能亢進症の原因は以下の2つです。

・甲状腺自体が大きくなったため、甲状腺ホルモンの過剰分泌を招いた

・甲状腺に腫瘍(しゅよう)ができたことで、甲状腺ホルモンの過剰分泌を招いた

残念ながら、甲状腺が大きくなったり、甲状腺の腫瘍できたりする理由は今のところわかりません。

海藻類(かいそうるい)に含まれるヨード(ヨウ素)の過剰摂取が原因になる場合もあれば、猫の性格、遺伝による場合もあります。ただ、原因が1つに確定される訳ではなく、いろいろな要素が相互に作用して甲状腺の異常が起こると考えられています。

私のかかりつけの獣医師によれば、動物病院に来た時に、興奮しやすい猫と落ち着いている猫を比べると、興奮しやすい猫のほうが、ホルモン系の病気(甲状腺や糖尿病)になる傾向があるとのことでした。

我が家のオス猫は、とても神経質な性質です。動物病院に行く道中は、ワオワオ鳴くこともありましたし、家に知らない人が来たりしたときは、押し入れの奥で隠れているような猫です。些細なことがストレスになってしまう性格が病気を誘発したのかもしれません。

つくづく、猫にとって心地良い環境を作ってあげることが大切だと感じました。

甲状腺機能亢進症と慢性腎不全

甲状腺機能亢進症の猫は、慢性腎不全(まんせいじんふぜん)にかかっていることがよくあります。慢性腎不全という病気も甲状腺機能亢進症の場合と同じく13歳以上の猫の約20%がかかっている病気です。

慢性腎不全とは腎臓の病気です。腎臓は、身体の中の汚いものを尿にして体から排出する機能があります。腎臓はせっせと働いているため、必要以上に疲れさせないためには、水分をたっぷり摂取することが鍵となります。

しかし、猫はもともと積極的に水を飲まない性質があり、若いうちから腎臓を使いすぎる傾向があります。その結果、高齢猫になれば、腎臓機能が弱ってしまうのです。

身体の中で、腎臓が弱ってくれば慢性腎不全になり、身体のダルさや食欲不振などの症状が徐々にあらわれます。しかし、甲状腺機能亢進症になると、甲状腺ホルモンが活発に分泌され、通常よりも腎臓の働きが良くなります。そうなると、慢性腎不全の症状があったとしても、症状として見えにくくなってしまうのです。

しかし、甲状腺機能亢進症の治療を始めると、甲状腺ホルモンの分泌が抑えられ、腎臓の働きはもとの状態に戻ります。そうなると、隠れていた慢性腎不全の症状があらわれはじめます。

このように、甲状腺機能亢進症の陰に慢性腎不全が隠れているケースがあります。そのため、甲状腺機能亢進症の治療をおこなうときには、血液検査で甲状腺ホルモンの数値であるT4とあわせて、腎臓の数値であるクレアチニンや尿素窒素(にょうそちっそ)なども注意深く見ていく必要があります。

甲状腺機能亢進症の治療

甲状腺機能亢進症の治療方法は、以下の3つがあります。猫の状態や体力を考え、適切な方法を選びます。

手術による治療

甲状腺を手術で切除する治療です。甲状腺は猫の喉に2つあります。どちらか片方を切除する場合と両方を切除する場合の2つがあります。

片方だけ切除する場合、甲状腺ホルモンの分泌が正常化すれば完治となります。一方で、両方の甲状腺を切除する場合は、猫の体内で甲状腺ホルモンを合成することができなくなります。そのため、甲状腺ホルモンを薬で補うことになります。

ちなみに、猫が甲状腺機能亢進症にかかりやすい年齢は、おもにに10歳以上です。もし、手術をすることになれば、全身麻酔をすることになります。全身麻酔は、高齢猫の身体に大きな負担になる場合もあるため、慎重に検討する必要があります。

クスリによる治療

甲状腺ホルモンの分泌を抑えるため、クスリを使う方法が一般的です。薬を飲み始めるときは、ホルモンのバランスを急激に変えないために、少しの量から始め、様子を見ながら調整していきます。

我が家の猫も薬による治療をすることになりました。治療のための薬はメルカゾール錠というものです。

実際のものは、以下のとおりです。


我が家の猫は、甲状腺ホルモンの値が(T4=24μg/㎗)と通常の甲状腺ホルモンの数値(T4 =0.6~3.9μg/㎗)と比較すると6倍も高く、早急な治療が必要でした。手術も考えましたが、16歳という年齢もあり麻酔リスクが高いためクスリによる治療を始めることにしました。

クスリでの治療は、甲状腺ホルモンの数値も確認しやすいのであまり身体に負担になりません。

ちなみに、薬は一粒あたり100円です。我が家の猫は1日1錠を投与するため、1日100円(1か月の薬代:100円×30日=3,000円)になります。ただ、1日当たりの投与量は薬の効果を見ながら増加する場合もあります。

甲状腺機能亢進症を治療する際のクスリの名称は、メルカゾール錠です。メルカゾールは、甲状腺ホルモンが作られるのを押さえるためのものなので、根本的に病気を治す薬ではありません。

そのため、メルカゾールの服用を止めると甲状腺のホルモンの値が高くなります。このため、メルカゾールでの治療を選択した場合、猫が生きている間はクスリを飲ませる必要があります。

実際に我が家の猫の甲状腺ホルモンの数値の推移を紹介します。

我が家の猫がメルカゾール錠の服用した後、経過について

我が家の猫が、甲状腺機能亢進症を発病した当初の甲状腺ホルモン濃度であるT4(サイロキシン)の数値は24㎍/㎗でした。健康な猫の甲状腺ホルモンであるT4の標準的な猫の数値は0.6~3.9㎍/㎗です。

通常の範囲の約6倍という異常値だったため、かかりつけの動物病院の医師もこの数値を見たのは初めてだと驚いていました。以下が初回T4の検査数値です。

とりあえず、我が家の猫は16歳の老猫ということもあり、メルカゾール錠での治療が身体の負担にならないよう、1日1錠(朝・晩にそれぞれ半錠ずつ)から始まりました。

甲状腺ホルモンは身体の新陳代謝や心臓や呼吸の働きを促すホルモンであるため、クスリで甲状腺ホルモンを急激に抑えると、猫の身体に負担がかかります。

また、クスリの副作用で、嘔吐(おうと)や下痢などの症状が出ないかどうかも心配です。そのため、クスリは少な目にして、猫の体調をよく確認しながら進めることになりました。

クスリを半錠ずつ与えると、クスリの苦みが嫌らしく、吐き出してしまいます。そのため、クスリは、ウェットフードに混ぜて与えるのが効果的です。知らないうちに、食事と一緒に食べてしまう方が猫にとっても、飼い主にとっても楽です。

我が家の猫は、とくに嘔吐(おうと)も下痢(げり)も起こりませんでした。クスリを飲み始めて2週間後に甲状腺のホルモン検査を行いました。甲状腺ホルモンであるT4の数値は以下の通りです。

当初の甲状腺ホルモンの数値であるT4は、24㎍/㎗でしたが、2週間後の数値は、T4が8.7㎍/㎗へ改善しました。クスリが順調に効いていることが確認することができました。そのため引き続き、メルカゾール錠を同様の1日1錠(朝・晩それぞれ半錠ずつ)与えることになりました。

さらに1か月後(治療開始から1か月半後)の甲状腺ホルモンの数値は以下の通りです。

前回の甲状腺ホルモンの数値であるT4は、8.7㎍/㎗でしたが、今回はさらにT4が6.6㎍/㎗へ改善していました。体調も異常はありません。体重が減少することもなく、元気な様子が見られるようになってきました。メルカゾール錠は、引き続き1日1錠(朝・晩それぞれ半錠ずつ)与えるのを継続することになりました。

さらに1か月後(治療開始からは2か月半後)の甲状腺ホルモン濃度は以下の通りです。

甲状腺ホルモンの数値であるT4は、驚きの1.47㎍/㎗になりました。発症当時からのT4の数値の変化をまとめてみると、(発病時)24㎍/㎗→(2週間後)8.7㎍/㎗→(1か月半後)6.6㎍/㎗→(2か月半後)1.47㎍/㎗です。その後も薬は、メルカゾール錠を1日1錠(朝・晩それぞれ半錠ずつ)与えています。

今後は、2~3か月おきに、甲状腺ホルモンの数値であるT4をチェックしながら、メルカゾール錠での治療をすることになります。

甲状腺機能亢進症は、治らない怖い病気というイメージがあり、診断確定されたときは、信じたくない気持ちと、不安な気持ちばかりでした。しかし、治療を始め甲状腺ホルモンの数値も安定してきたので一安心です。

甲状腺機能亢進症は長く付き合う病気ですが、早めに治療に取り組めば、思った以上に元気な様子を見せてくれます。高齢猫だけに、早めに体調の変化に気づき、治療を始めましょう。

さて、我が家の猫はメルカゾール錠というクスリの治療を選択しました。しかし、クスリによる治療は、なんだか気が進まない、副作用が心配という飼い主さんもいらっしゃるでしょう。そんなときは、低ヨウ素のキャットフードで治療をすることもできます。そんな方のために、低ヨウ素の甲状腺機能亢進症の療法食について詳しくお話します。

低ヨウ素のキャットフードによる治療

まず、甲状腺機能亢進症の猫専用の療法食(y/d)があります。ヒルズというアメリカのキャットフードメーカーから販売されています。

実際のパッケージは(ウェットタイプ)は以下の通りです。濃い紫のラベルとy/dが目印です。

療養食は複数のキャットフードメーカーから販売されていますが、甲状腺機能亢進症の療養食はヒルズの一社だけです。写真のウェットタイプ(1缶156g)と、ドライタイプ(1袋2㎏入りのみ)の2種類があります。

甲状腺機能亢進症の療養食は、ヨウ素(ヨード)が制限された低ヨウ素タイプとなっています。こだわりの強い猫の場合、なかなか食べてくれないこともあります。しかし、猫の好き嫌いは、食感も関係しているため、ドライフードがダメでも、ウェットフードはOKとなる場合もあります。

クスリに頼らず、食事だけで甲状腺機能亢進症の治療を行いたい場合は、低ヨウ素タイプの療養食が頼りになります。最初は口をつけなくても、根気よく与えていれば、慣れてくるものです。根気よく与えるようにしましょう。

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低ヨウ素のキャットフードを与える際の注意点

低ヨウ素の甲状腺機能亢進症の療養食(y/d)はヨウ素(ヨード)を制限することで、甲状腺ホルモンが作られるのを抑えます。そのため、他のキャットフードやおやつを与えてはならないという注意点があります。

甲状腺機能亢進症を治療を目的にしているため、甲状腺機能亢進症の療養食(y/d)とお水だけという食事を徹底する必要があります。もし、他のキャットフードやおやつを少しでも食べてしまうと、ヨウ素(ヨード)を低くした意味がなくなってしまいます。

クスリに頼らず、食事だけで甲状腺機能亢進症を治療する場合は、食事管理を徹底することが大切です。

そのため、猫が甲状腺機能亢進症の療養食(y/d)だけを食べてくれれば良いですが、我が家のような多頭飼いの場合であれば、他の猫が食べているキャットフードを食べてしまう可能性があります。そうなると、食事だけの治療は難しいということになります。

治療する環境が、適しているかどうかも考える必要がありそうです。甲状腺機能亢進症の治療は一生続ける必要があります。

低ヨウ素のキャットフードの効果について

最後に、低ヨウ素の療養食(y/d)を食べ始めてから、効果が出るまでにかかる期間についてお話します。

甲状腺機能亢進症の療養食(y/d)とお水だけの食事を始めて、約3週間で治療効果が見られます。ただ、今まで食べていたフードからの切り替えをするための期間を10日程が必要となります。

そのため、フード切り替え期間を合わせると、治療効果の確認までには、1か月~1か月半を見ておいた方が良いでしょう。

まとめ

甲状腺機能亢進症は10歳以上の高齢猫の10~20%が発症する病気です。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、身体の新陳代謝が活発になります。

主な症状は、「食欲が旺盛なのに痩せていく」「落ち着きがなく、活発に動く」「興奮しやすい」「多飲」「下痢」などさまざまです。高齢猫なのに、元気に動き回りすぎたり、食欲が有り過ぎたりする場合は注意をしましょう。

甲状腺機能亢進症の治療は、手術、投薬、食事療法の3種類です。それぞれメリット・デメリットを考え、あなたの猫がにあった甲状腺機能亢進症の治療をしましょう。

食事療法は、ヒルズの低ヨウ素のキャットフードだけが、甲状腺機能亢進症の療養食(y/d)です。食事療法で治療をするときは、療養食(y/d)と水だけを与えるというルールをしっかり守りましょう。

甲状腺機能亢進症は、高齢猫がかかりやすい病気です。早く症状に気づき、適切な投薬・食事療法をすれば、安定した状態を意外なほど早く得られます。病気とは気長に付き合うことが必要になります。