ミネラルの種類は数多くありますが、マグネシウムは、猫が1日に100mgの摂取を必要とする主要必須ミネラルの中に含まれています。そのため、猫にとってマグネシウムは健康な身体を維持するために欠かせないミネラルです。

マグネシウムは、骨格を形成したり、神経の伝達をスムーズにしたりと身体を動かすうえでは、重要な役割を担ったミネラルです。一方で、マグネシウムは、猫の腎臓や膀胱などの尿路にストルバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石)を作るため、摂り過ぎは身体に悪いと感じます。

実際のところ、マグネシウムはどのくらいの量を摂取するのが適正なのでしょうか。私たち飼い主は、猫の健康を維持するための適正なマグネシウムの摂取量を知る必要があります。

今回は、マグネシウムの働きやストルバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石)がなぜできるのかについてや、低マグネシウムのキャットフードにはどのくらいのマグネシウムが含まれているのかをお話します。

この記事を読むことで、低マグネシウムのキャットフードを選ぶときの適正な含有量がどのくらいで、低マグネシウムのキャットフードは、どのくらいの年齢の猫が適しているのかについて理解することができます。

マグネシウムについて

マグネシウムは猫が健全な身体を維持するための重要な働きを担うミネラルです。マグネシウムは身体の細胞や骨に広く存在しています。

マグネシウムは身体を機能するための大切なミネラルであるため、猫の身体は、血中のマグネシウムが不足すると、骨に蓄えられているマグネシウムを取り出して常にマグネシウムの量を一定に保とうとします。

マグネシウムは摂取した後、大部分は骨に存在しています。残りは、身体の全ての細胞や血中に存在しています。

マグネシウムの働き

マグネシウムの働きは以下の通りです。

・骨の強度を上げる

・タンパク質を合成する

・神経の伝達をスムーズにする

・筋肉をしなやかに動かす

・心臓機能を健全に維持する

・血圧を調整する

・食べ物を吸収できる栄養素に分解する

猫の身体でさまざまな働きをするマグネシウムは欠かせない栄養素です。また、マグネシウムは身体で合成することができないミネラルです。そのため、マグネシウムを制限しすぎて不足すると、猫の身体にさまざまな不調を招きます。

あなたの猫の健康を守るためにも、マグネシウムはとても重要な働きをするミネラルということをしっかり理解する必要があります。

では、もし万が一、マグネシウムが不足した場合猫の身体にはどのような症状がみられるのでしょうか。具体的な症状について確認していきましょう。

マグネシウムが不足した場合

マグネシウムが不足すると以下のような病気を引き起こします。

骨粗しょう症や骨のトラブル

猫が摂取したほとんどのマグネシウムは、骨に蓄えられ、骨を強くするために使われます。そのため、マグネシウムが不足すると、骨の強度が保てず、骨が柔らかく曲がりやすくなります。

また、マグネシウムとカルシウムはお互いに補完し合う関係のミネラルであるため、マグネシウムが不足するとカルシウムの値も下がり骨粗しょう症になります。

心疾患

血液中のマグネシウムが不足すると低マグネシウム血症という症状を引き起こします。低マグネシウム血症では、心臓の働きが悪くなり、脈の速度が速くなったり、ゆっくりになったりが不規則に起こる不整脈(ふせいみゃく)が起こります。

その他の症状

マグネシウムは身体の細胞に存在しているため、不足すると以下のような諸々の症状がみられるようになります。

神経の伝達が上手く働かないことから、筋肉の痙攣(けいれん)が起こります。他にも神経の動きが鈍ることで、内臓がスムーズに動かないことから、食欲不振(しょくよくふしん)や下痢・便秘になる場合もあります。

身体の不調がもとで、気持ちにイライラや不安が生じストレスを抱えることにもつながります。

ストレスが多いと尿中に捨てられるマグネシウムが増加するため、更に猫の身体でマグネシウムの不足が起こりやすくなります。

このように、マグネシウムが不足すると猫の身体はいろいろなトラブルを抱えることにつながります。あなたの猫がなんだか最近元気がないなと感じたら、それはマグネシウム不足によるものかもしれません。

マグネシウムを悪者扱いしていませんか?マグネシウムは重要な栄養素であるため、制限しすぎないよう気をつけましょう。

ただ、マグネシウムが主要な成分のストラバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石)の原因になるため、マグネシウムの量を控えた方が良いと感じる飼い主さんもいます。

まずは、マグネシウムの適正な基準についてお伝えする前に、ストラバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石)についてお話をします。

ストラバイト結石について

猫の祖先は、砂漠のような乾燥地帯で暮らしていました。摂取できる水が限定されるという環境に合わせて、猫は体内で水をリサイクルしながら生活できるように進化しました。少ない水分をうまく活用するには、排出するおしっこの量は少な目になります。

そのため、猫のおしっこは身体に不要なものを濃縮(のうしゅく)したものになり、においが強く、色も濃くなる傾向があります。

また、猫の濃いおしっこの中には、ミネラル分が多く存在しています。ストラバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石)は、リンとマグネシウムとアンモニウムが尿中で溶け切れず結晶になり、さらに結晶がくっつき合うことで結石になります。

以下は、尿中のミネラルの結晶化についてを表した図になります。

ロイヤルカナンのホームページから転記

ストラバイト結石は、腎臓(じんぞう)、尿管(にょうかん)、膀胱(ぼうこう)、尿道(にょうどう)などの「尿路」で結晶化し、結晶がさらに大きくなり結石化します。

この結石がしたものが、猫の尿路に出来ると、おしっこをスムーズに出すことができません。おしっこがなかなか出ないためトイレで踏ん張っていたり、おしっこに血が混じったり(血尿)することがあります。

このような尿の中でミネラルが結晶化したり結石化したるするのを防ぐためには、猫が水をたくさん飲むことが重要です。

水分を摂取すれば、不要なミネラルがどんどん洗い流されて体外に排出されます。腎臓や膀胱におしっこが長くとどまることが無いためミネラル同士で結晶化しにくくなります。

ストラバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石)を防ぐためには、猫にとっての適正な量のマグネシウムが含まれたキャットフードを選ぶことと、日ごろからたっぷりの水を飲むことが重要なポイントになります。

マグネシウムの適正な基準とは

マグネシウムは猫にとって重要なミネラルであるため、マグネシウムが不足すると、猫の身体全体の不調につながります。

一方、ストラバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石)は、おしっこの中のマグネシウムなどのミネラルが過剰になることで形成されます。

猫の身体にとって、マグネシウムは不足しても、過剰になっても問題です。実際にどのくらいの量が猫の身体にとって適正なのかについて以下に説明をします。

マグネシウムの含有量の最低基準

キャットフードの中に含まれるマグネシウムの適正な基準について考えるとき参考にする栄養基準があります。

AAFCO(米国飼料検査協会の略称)では、猫が健康な身体を維持するための栄養基準について決めています。ただ、AAFCOの摂取基準値というのは、最小基準になります。

まずは、AAFCOで定められたマグネシウムの摂取基準は以下の通りです。

子猫最小値 成猫最小値
マグネシウム 0.08% 0.04%

子猫は生後1年までの期間をいいます。この時期は、成長期であるため、成猫と比較すると約2倍の栄養が必要になります。表に記載してあるマグネシウムの摂取基準を見ても、子猫は成猫の2倍のマグネシウムが必要ということが分かります。

キャットフードのマグネシウムの含有量が上記の量よりも少ないものは問題です。あなたの猫に与えるキャットフードのマグネシウムの量は、上記の最小基準量よりも多く含まれているものを選ぶようにしましょう。

低マグネシウムキャットフードの比較

ここでは、実際の低マグネシウムキャットフードに含まれるマグネシウムについて見ていきましょう。年齢別のものであれば7歳以上の猫(シニア猫用)あたりから、マグネシウムの量が調整されています。

ロイヤルカナン インドア7+

ロイヤルカナンはフランスのペットフードメーカーです。ロイヤルカナンの7歳以上の猫用キャットフードは以下のようなパッケージです。

キャットフードに含まれているマグネシウムは0.09%です。前述したAAFCO(米国飼料検査官協会に略称)の基準値(0.04%)と比較すると約2倍のマグネシウムが含まれています。

ロイヤルカナン エイジング12+

同じロイヤルカナンの12歳以上の猫用のキャットフードは以下のようなパッケージです。

キャットフードに含まれているマグネシウムは0.06%です。AAFCOの基準値(0.04%)と比較すると、1.5倍のマグネシウムが含まれています。

ヒルズ サイエンスダイエット 11歳以上用

ヒルズはアメリカのペットフードメーカーです。サイエンスダイエット11歳以上用のパッケージは以下の通りです。

キャットフードに含まれているマグネシウムは0.077%です。AAFCOの基準値(0.04%)と比較すると、約2倍のマグネシウムが含まれています。先に紹介したロイヤルカナン7+と比較してもほぼ同量のマグネシウムの量になります。

ヒルズ サイエンスダイエット 14歳以上用

同じくヒルズのサイエンスダイエット14歳以上用のパッケージは以下の通りです。

キャットフードに含まれるマグネシウムは0.075%です。AAFCOの基準値(0.04%)と比較すると、約1.8倍のマグネシウムが含まれています。先に紹介したロイヤルカナンの12+(0.06%)と比較しても似たり寄ったりの含有量です。

低マグネシウムの含有量の基準とは

低マグネシウムのキャットフードに含まれるマグネシウムの含有量は0.06~0.09の間でした。すべて、AAFCOの成猫以上の基準値(0.04%)よりは、多めのマグネシウムが含まれていました。

マグネシウムは重要なミネラルになるため、低マグネシウムタイプのキャットフードであったとしても、0.06~0.09%程のマグネシウムが含まれています。

あなたの猫に低マグネシウムタイプのキャットフードを選んであげる場合、0.06~0.09%の含有量のものを選んであげるとよいでしょう。この範囲のものであれば、猫の身体に大切な役割があるマグネシウムが不足して健康を害する心配はありません。

ニュートロのキャットフード

ニュートロナチュラルチョイスはでアメリカのキャットフードメーカーです。良質なタンパク質が豊富なキャットフードです。

ニュートロは子猫用、成猫(アダルト猫)、シニア猫用のライフステージごとのキャットフードが作られています。

ニュートロの2種類のパッケージを掲載します。

まずは、成猫(アダルト猫)白身魚は以下の通りです。

穀物フリータイプ(グレインフリー)は以下のようなパッケージになります。

ニュートロはライフステージごとにキャットフードが作られていますが、マグネシウムの含有量はどの年代も同じです。

参考までに、ニュートロのマグネシウム量を以下の通り一覧表にしました。

キャットフード種類 マグネシウムの量
室内猫用 キトン チキン 0.15%以下
避妊・去勢猫 アダルト 白身魚 0.15%以下
避妊・去勢猫 エイジングケア

(シニア猫用)白身魚

 

0.15%以下

減量用 アダルト チキン 0.2%以下
穀物フリー アダルト サーモン 0.15%以下

先に紹介したロイヤルカナンやヒルズの低マグネシウムタイプは、マグネシウムの含有量は0.06%~0.09%の間でした。一方、ニュートロのキャットフードについては、0.15%~0.2%になっています。

先ほど紹介した低マグネシウムのキャットフードと比較すると、マグネシウムの量は多めです。

マグネシウムの量が多い理由について確認するため、ニュートロのキャットフードに表示のあるお客様相談室に電話をして聞いてみることにしました。

以下がその時の会話になります。

質問:通常のキャットフードは、マグネシウムの含有量がだいたい0.06%~0.09%のものが多く低マグネシウムタイプが多い中、御社のキャットフードのマグネシウムの量は0.15%~0.2%以下となっています。比較すると含有量が多いと感じます。何か理由はありますか?

回答:ニュートロのキャットフードについては、獣医師、動物の栄養学者等の意見を取り入れながら開発されています。マグネシウムの含有量が他社のキャットフードと比較すると確かに多いですが、弊社のキャットフードを食べた猫の健康に問題があったということは聞いていません。

質問:御社のキャットフードを食べていて、尿路結石になったという報告があったということはないのですか?

回答:いまのところ特にありません。ただ、尿路結石などのトラブルを抱えた猫を飼っていらっしゃる場合、猫の体調にあったものを与えることが重要になります。その際は、かかりつけの獣医師に相談されることをおすすめします。

ニュートロのキャットフードは、療養食ではありません。ニュートロは、内臓に問題の無い健康な猫を対象に作られています。

飼われている猫ちゃんの腎臓の調子が悪かったり、尿路結石のようなトラブルを抱えたりしている場合であればおすすめしません。

ニュートロキャットフードでは、アダルト(1歳~7歳)、シニア(7歳~11歳)までのキャットフードが販売されています。しかし、高齢猫(12歳以上用)を対象とするキャットフードは販売されていません。

12歳以上の猫になると、腎臓などの内臓の数値が高くなったり、尿路結石ができたりなどのトラブルを抱えるケースが出てきます。前述したニュートロのキャットフードの問い合わせ内容の中にも、「健康な猫向け」という言葉がありました。

ニュートロキャットフードは、健康な猫を対象としたキャットフードということを理解しておきましょう。

そのため、シニア猫(7歳~11歳)や高齢猫(12歳以上)の猫のように、徐々に猫の体調に問題が出てくる年齢の猫に対しては、ニュートロキャットフード自体が適さない場合があります。

もし、あなたの猫の体調が心配であれば、低マグネシウムタイプの0.06~0.1%のキャットフードを選んであげるようにしましょう。

まとめ

マグネシウムは1日に約100mgの摂取を必要とする主要必須ミネラルの仲間です。猫の身体を健康に維持するためには、欠かせないミネラルです。

マグネシウムが不足すると、骨がもろくなったり、内臓全般の働きが悪くなります。深刻な症状としては、心臓の働きが悪くなり、不整脈(ふせいみゃく)を引き起こすことがあります。

マグネシウムを摂取しすぎると、ストラバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石)を、猫の尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に作ります。

ただ、ストラバイト結石は、猫の水分摂取が少ないためおしっこが濃くなり、ミネラルが結晶、結石化することが原因になる場合もあります。まずは、あなたの猫がたっぷりの水を飲み、ミネラルを洗い流すことで防ぐことができます。

低マグネシウムタイプのキャットフードは、猫の年代がシニア期(7歳~11歳)、高齢期(12歳以上)を対象として作られています。

シニア期(7歳~11歳)以降の猫のマグネシウムの適正な摂取量は、0.06%~0.1%です。このくらいの範囲であれば、マグネシウムが不足したり、過剰になったりする問題はありません。

あなたの猫が健康に過ごすためにも、猫の年代にあったマグネシウム含有量を理解し、適正な含有量のキャットフードを選んであげましょう。