猫にとってミネラルは健康な身体を維持するために必要な栄養素です。猫が必ず摂取すべき主たるミネラルには、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リン、マグネシウムなどがあります。

ミネラルは互いに働きを補完しながら機能するため、特定のミネラルばかりを摂取しすぎると、猫の身体に悪影響を及ぼすことになります。そのため、猫が健康に過ごすためには、必要なミネラルをそれぞれバランス良く摂取することが重要です。

今回は、猫の身体に必要なミネラルのうち、リンについてお話します。リンは骨格形成のためにはなくてはならないミネラルですが、過剰になると、腎臓に負担を掛ける厄介なミネラルです。

そのため、猫の腎臓機能が衰えだす7歳ごろからは、リンを制限した「低リンキャットフード」に切り替える必要があります。この記事を読めば、リンの働き、リンが過剰になった際の猫への影響、低リンキャットフードの特長について知ることができます。

あなたの猫が健康に過ごすためにも、リンについて良く理解しましょう。

ミネラルとは

ミネラルはどれも骨格を作る主要な成分です。また、身体全体を正常に動かすサポートをしている栄養素でもあるため、過剰・不足が起こると、身体全体の不調に見舞われます。

ミネラルの種類は数多くありますが、その中で猫にとって必要となるミネラルは12種類です。1日の必要な摂取量が100mgを超える「主要必須ミネラル」と1日の必要な摂取量が100mg以下の「微量必須ミネラル」に分けられます。

今回のテーマとなるリンは主要必須ミネラルの仲間です。実際にリンは猫の身体でどのような働きをするのでしょうか。その働きについて以下にお話しをしていきます。

リンの働き

リンは、細胞やタンパク質を構成しているミネラル成分です。猫が摂取したリンの80%は、カルシウムと結合して骨や歯の成分になります。そして、残りの20%は、猫の細胞膜を構築する成分や神経の伝達をスムーズするために使われます。そのため、リンは猫の身体を正常に保つためには、なくてはならない大事なミネラルといえます。

リンが猫の体内でうまく機能するために、リンとカルシウムを摂取するバランスが大切です。推奨されるリンとカルシウムの摂取比率は、リン:カルシウム=1:1.2~1.5になります。

もし、リンとカルシウムの摂取量のバランスが崩れ、猫の血液中のリンが多くなると、猫の身体にさまざまな症状があらわれます。以下にそれぞれの症状について説明します。

リンが過剰の場合

リンとカルシウムは、摂取量のバランスが大事です。万一、猫の血液の中のリンが多くなりすぎて、カルシウムが不足した場合、「高リン血症」になります。

高リン血症になると、猫の身体にどのような影響が出るのでしょうか。代表的なものに以下の2つがあります。

・骨粗しょう症を引き起こす

・慢性腎臓病を悪化させる

それぞれについて詳しく説明します。

骨粗しょう症を引き起こす

高リン血症とは、猫の血中のリンが多くなりすぎる症状です。そうなると、カルシウムはリンの量に比べると少なくなってしまいます。結果的に足りないカルシウムを得るために、猫の身体の骨を溶かすことになり、骨粗しょう症を引き起こします。

慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)を悪化させる

猫の体内のリンが過剰になる原因としては、慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)があります。慢性腎臓病とは、猫が老化することで腎臓の働きが徐々に悪くなり、腎臓の機能が50%以上失われた状態のことをいいます。

高齢の猫に多く、10歳を過ぎたあたりから徐々に増え、15歳以上になると30%の猫が慢性腎臓病を患っています。

以下の表で実際に15歳以上の猫の慢性腎臓病に罹っている割合を確認することができます。

ロイヤルカナンのホームページから抜粋

慢性腎臓病になると、腎臓の機能が衰えます。腎臓には3つの機能があります。

・体内の老廃物の排せつ

・体液の量・濃度のバランスを調整する

・ホルモンを作る

この3つの機能の中で、リンと関係があるのは「体液の量・濃度のバランスを調整する」になります。その点について以下に詳しく説明をします。

体液の量・濃度のバランスを調整する

腎臓には水分の他に、ナトリウム、カルシウム、リン、カリウムなどのミネラルを一定のバランスで保つよう調整をする機能があります。日ごろからミネラルの摂取バランスは大切ですが、多少バランスを崩したところで、腎臓が正しく機能していれば、過剰なミネラルは尿として排出されます。

ただ、猫は老化により腎臓機能が低下することで、余分なリンが排出できなくなります。そうなるとリンが血中に多くなる高リン血症を招き、さらに腎臓機能を悪化させることにつながります。リンを多く摂り過ぎることは、慢性腎臓病を引き起こすリスクを高めることにつながります。

そのため、あなたの猫がまだ若く、腎臓病の心配がない年齢だとしても、7歳を過ぎたころからは低リンキャットフードを与え、慢性腎臓病の予防をすることをおすすめします。

腎臓は一旦機能を失うと、回復することはありません。あなたの猫が元気に長生きするためには、毎日食べるキャットフードが猫の年齢相応なものを選んであげることが重要になります。

低リンタイプのキャットフードとは

リンは骨や歯、細胞を作るためにはなくてはならない栄養素ですが、腎臓の機能が衰えてくる高齢猫にとってのリンは、腎臓に負担を掛ける栄養素になります。そのため、7歳以上のシニア猫用、12歳以上の高齢猫用のキャットフードは低リンタイプのものが多く販売されています。

低リンタイプは徐々に腎臓機能が衰える猫に対して腎臓を労わるためにはとても便利なキャットフードですが、そればかりを猫に与えていると、味が単調で飽きて食べなくなることがあります。

猫にとっても人間と同じく、食べる楽しみや満足感は大事です。そんなときのために、全年齢型のキャットフードをローテションの中に入れてあげると良いでしょう。

以下に低リンタイプのキャットフードを紹介します。

ヒルズのリンが制限されたキャットフード

ヒルズはアメリカのキャットフードメーカーです。ヒルズは猫のライフステージに合わせたキャットフードを販売しています。低リンタイプのキャットフードは、7歳以上のシニア用、11歳以上、14歳以上の高齢猫用があります。

7歳以上のシニア用は以下の通りです。

11歳以上の高齢猫用は以下の通りです。

14歳以上の超高齢猫用は以下の通りです。

それぞれのリン・カルシウムの含有量については以下の表の通りです。

7歳以上 11歳以上 14歳以上
リン 0.67% 0.62% 0.67%
カルシウム 0.74% 0.8% 0.91%
リン:カルシウム 1:1.1 1:1.29 1:1.35
リン・カルシウムの含有比率評価  

 

 

7歳以上、11歳以上、14歳以上でリンの含有量が微妙に違います。その違いについては、ヒルズに電話にて確認をしたところ、大きな問題はなく、どの年齢のものもリンは同じ量になっているとのことでした。

ヒルズのキャットフードは、食べる時と全く食べない時があるため、最近は我が家の猫のローテーションキャットフードになっていません。ただ、酸化防止剤は、ローズマリー抽出物やビタミンCなど自然由来のものなので、その点を重視される方は、ヒルズを選ぶとよいでしょう。

ロイヤルカナンのリンが制限されたキャットフード

ロイヤルカナンはフランスのキャットフードメーカーです。ロイヤルカナンもヒルズと同じく猫のライフステージに合わせたキャットフードを販売しています。

低リンタイプのキャットフードは、4種類あります。7歳以上のシニア猫用(標準体重用・太り気味の猫用)と12歳以上の高齢猫用(標準体重用・太り気味の猫用)です。

7歳以上のシニア猫用 インドア7+(標準体重の猫用)は以下の通りです。

7歳以上のシニア猫用 インドアステアライズド7+(太り気味の猫用)は以下の通りです。

12歳以上の高齢猫用 エイジング12+(標準体重の猫用)は以下の通りです。

12歳以上の高齢猫用 エイジングステアライズド12+(太り気味の猫用)は以下の通りです。

4種類のキャットフードのリン・カルシウムの含有量については以下の表の通りです。

インドア7+ インドア

ステアライズド7+

エイジング

12+

エイジング

ステアライズド12+

リン 0.75% 0.69% 0.6% 0.6%
カルシウム 0.9% 1% 0.75% 0.75%
リン:カルシウム 1:1.2 1:1.45% 1:1.25 1:1.25
リン・カルシウムの含有比率評価  

 

 

 

人間も成長期の子供、20代~30代の基礎代謝が活発な時期、40代以降の基礎代謝が落ちてくる年代では食べるものや、必要になる栄養素に違いがあります。猫も同じく、高齢になれば若いときと同じキャットフードは身体に合わなくなってきます。猫の年齢を考えながら、年代に合ったものを選んであげましょう。

我が家の猫もシニア以上の猫ばかりなので、ライフステージごとのキャットフードはローテーションに入っています。ヒルズとロイヤルカナンでは、ロイヤルカナンの方を好むため、エイジング12+を与えています。

ちなみに、酸化防止剤はBHAや没食子酸プロピルのような人工のものが入っていますが、常時ロイヤルカナンのキャットフードばかりを与えているわけではないため、特に問題にしていません。ただ、酸化防止剤は自然由来の方がよい場合は、ヒルズのキャットフードをおすすめします。

オリジンのリンが制限されたキャットフード

オリジンはカナダのチャンピオンペットフーズ社が販売しているキャットフードです。工場はアメリカにあり、現地で収穫される新鮮な魚、肉、野菜、果物がふんだんに使われています。

猫の食性を活かして、タンパク質が中心に作られています。タンパク質の量は、全体の40%以上あります。一般的なキャットフードのタンパク質量は30%前後のものがほとんどです。

リンは肉、魚、卵、乳製品、豆類などに多く含まれている栄養素であるため、タンパク質の量が多いオリジンキャットフードに含まれるリンの量が多くなるのは必然です。

子猫から成猫の間は、しっかりした骨格形成や神経の発達に欠かせない栄養素のリンは十分に摂取する必要があります。一方、7歳以上の猫に対しては衰えてくる腎臓を大事にした方が良いため、リンの摂取量を控える必要があります。そのため、リンの含有が多いオリジンは7歳以上の猫には適さない味もあります。

では、実際にオリジンキャットフードについて中身を確認していきましょう。味は4種類あり、パッケージは以下の通りです。

上記はキャット&キティです。主になるタンパク質は、鶏、七面鳥、魚です。

上記はシックスフィッシュです。主になるタンパク質は、大西洋でとれた6種類の魚です。

上記は、フィット&トリムです。主たるタンパク質は鶏、七面鳥、大西洋で獲れた魚です。キャット&キティやシックスフィッシュよりもタンパク質の割合が高いタイプです。

オリジンのキャットフードのリン・カルシウムの含有量については以下の表の通りです。

キャット&

キティ

シックス

フィッシュ

フィット&

トリム

レジオナル

レッドキャット

リン 1% 1.3% 1.5% 1.4%
カルシウム 1.2% 1.5% 1.8% 1.9%
リン:カルシウム 1:1.2 1:1.15 1:1.2 1:1.35
リン・カルシウムの含有比率評価  

 

 

 

推奨されるリンとカルシウムの摂取比率は、1:1.2~1.5です。4つの味を比較すると、シックスフィッシュが若干範囲から外れています。ただ、大きく外れているわけではないため、問題はありません。シックスフィッシュ以外の3つの味でのリンとカルシウムのバランスは良好です。

次に含有量についてです。上記の表から、オリジンキャットフードのリン含有量は、先に紹介したヒルズやロイヤルカナンの低リンキャットフードと比較して多いということが確認できます。

そのため、7歳以上の猫に対しては、4つの味の中で相対的にリンの含有量が低いキャット&キティが適しています。他の3つの味は、リンの含有が多いため与えない方が良いでしょう。

また、あなたの猫が1歳から6歳までであれば、猫の好む味のキャットフードを食べさせてあげましょう。但し、猫がどれだけ好んだとしても、同じ味ばかり食べさせると味覚に偏りが出てきます。なるべく、4種類の味を公平にローテョンしてあげると良いでしょう。

アカナのリンが制限されたキャットフード

アカナは先に紹介したオリジンと同じチャンピオンペットフーズ社が販売しているキャットフードです。オリジンはアメリカに工場がありますが、アカナはカナダに工場があります。

そのため、アカナのキャットフードはカナダのアルバータ地方で採れる肉、魚、野菜、果物が使われています。オリジンがタンパク質40%以上に対してアカナはタンパク質37%以上です。タンパク質の量はアカナのキャットフードの方が若干少な目です。そのため、リンの含有量はアカナの方がオリジンよりも少なくなります。

アカナのキャットフードは全部で3種類の味があり、パッケージについては以下の通りです。

上記はワイルドプレイリ―です。主になるタンパク質は、鶏肉、七面鳥です。

上記はパシフィカです。主になるタンパク質は海や湖で獲れた魚です。

上記はグラスランドです。主になるタンパク質は、牧草を食べて飼育した羊肉です。

アカナのキャットフードのリン・カルシウムの含有量については以下の表の通りです。

ワイルドプレイリ― パシフィカ グラスランド
リン 1.1% 1.1% 1.4%
カルシウム 1.5% 1.5% 1.8%
リン:カルシウム 1:1.36 1:1.36 1:1.29
リン・カルシウムの含有比率評価  

 

 

推奨されるリンとカルシウムの摂取比率は、リン:カルシウム=1:1.2~1.5になります。3つの味を比較すると、どれも推奨比率の範囲内になっています。リンとカルシウムのバランスは良好です。あなたの猫が1歳から6歳までの期間であれば、好みの味のものを与えてあげましょう。

ただ、あなたの猫の年齢が7歳以上であれば腎臓を労わるためにも、相対的に低リンタイプのワイルドプレイリ―、パシフィカを選んであげるようにしましょう。

低リンタイプのキャットフードの効果について

我が家には、14歳以上の猫が3匹います。7歳を過ぎるころから低リンタイプのキャットフードを与えるようにしています。どの猫も今のところ、年に1~2回健康診断で血液検査では、慢性腎臓病と診断された猫はいません。

慢性腎臓病の診断は、血液検査、腎臓の画像診断、猫の症状を見ながら獣医師が判断することになります。血液検査では、クレアチニン、尿素窒素の数値に異常がないか確認をします。

それぞれの猫の血液検査の結果を紹介します。

現在19歳の猫の直近の検査結果は以下の通りです。

猫の19歳は人間でいうところの92歳です。超高齢猫ですが、今のところ腎臓に問題がないため元気に過ごしています。ロイヤルカナンの12+、アカナのキャットフードがお気に入りです。ただ、高齢猫ゆえに便秘をすることがあるため、水分をしっかり摂れるようウェットフードも食べるようにしています。

以下は、現在15歳の猫の直近の検査結果です。この猫の場合、甲状腺機能亢進症という病気の治療を始めて7か月が経過しました。現在は投薬治療中で状態は安定しています。腎臓の状態は今のところ問題なしです。

ちなみに、血糖値が高くなるのは、病院に行って興奮しているためです。環境の変化に敏感な猫は、病院に行くと血糖値が高くなります。いつものことなので問題はありません。

甲状腺機能亢進症を発病して6か月までは、食欲にムラがありドライタイプのキャットフードをほとんど食べませんでしたが、それ以後体調が回復したため、どんなキャットフードでも食べることができるようになりました。

以下は、14歳の猫の直近の検査結果です。

我が家の猫の中で一番好き嫌いがなく、どんなキャットフードでも喜んで食べます。今まで病気はしたことがありません。

私の周囲の人から、猫は腎臓が弱いとか、歳をとれば腎臓の病気にかかるという話を聞いていました。そのため、低リンキャットフードへの切り替えは早い時期から行うようにしています。

毎日の食習慣である程度は、猫がかかりやすい慢性腎不全を予防できます。あなたの猫が元気に過ごすためにも、7歳以上になったら、低リンキャットフードに変更することが重要です。

まとめ

リンは猫の身体に無くてはならない大切なミネラルです。一方、リンが過剰になると、腎臓の機能にダメージを与えます。

猫は、歳とともに腎臓機能が衰え、不要なリンを体外に排出することが困難になります。そのため、リンを摂取しすぎないよう日頃から注意することが重要になります。

猫が7歳を過ぎたころから、毎日与えるキャットフードを低リンタイプに切り替えることで、猫の腎臓を労わることができます。その結果、あなたの猫が元気に長生きすることができます。

ライフステージで区切ったキャットフードであれば、7歳以上のものからは、低リンタイプになっています。それ以外の全年齢型のキャットフードであれば、リンの含有量をチェックし、なるべくリンの量が少ないものを選ぶようにしましょう。

我が家の猫達も、7歳を過ぎたころから低リンキャットフードに切り替えています。今のところは、慢性腎臓病ではなく元気に過ごしています。腎臓は一旦悪くなると、残念ながら機能を回復させることはできません。できるだけ負担のかからない食事を選んであげることが、あなたの猫の健康を守ることになります。