家の中で飼うほとんどの猫は、生後1~2年の間に、去勢・避妊手術をします。去勢・避妊手術をすることで、毎日の運動量が減りますが、1日に食べる量がそのままのため、太ってしまいます。
家の中で過ごす猫たちは、活動する範囲も少なく、ゴロゴロすることも多くなりがちになります。どうしても、消費カロリーが少なくなるため、食事もそれに合わせて低脂肪・低カロリーのものに切り替えると、太りすぎになるのを回避できます。
低脂肪・低カロリーのキャットフードは、通常のものと比べておいしくないかもしれないと考えがちですが、猫が好む香りづけがされ、腹持ちの良いものなど、いろんな面で工夫されたキャットフードが多くあります。
どのキャットフードを選ぶか目移りしてしまいますが、猫の健康を考えたなら「タンパク質の量」は大事なポイントになります。というのも、猫にとってはタンパク質は健康を維持するために欠かせない栄養素だからです。
今回の記事は、低脂肪・低カロリーフードの中でも、猫にとって大事な栄養素となるタンパク質がしっかり含まれたキャットフードについてお話をします。
もくじ
低脂肪・低カロリーキャットフードへの切り替えは早めに
低脂肪・低カロリーのキャットフードに切り替える必要がある猫というのはズバリ肥満体の猫です。肥満かどうかを確認する目安としては、猫が満1歳を迎えたときとの体重の差を比べてみるのが良いでしょう。
目安としては、あなたの猫が満1歳になったときの体重に比べて、30%以上太っていれば、肥満体と思って良いでしょう。実際の体重で考えると、もし、満1歳時の体重が4㎏であれば、30%増量すると4㎏×1.3%=5.2㎏になります。このくらい体重が増えると、見た目もどっしりした印象になります。
実際のところ、家の中で生活する猫は去勢・避妊手術をした後、あまり運動をしなくなったわりに、食欲は前のままということあり、気を付けていないと、たいがいの猫は太ってしまいます。
コロコロした猫は、かわいらしいですが、太り過ぎると、糖尿病や心臓疾患、関節痛などのリスクが高まります。飼い主は「最近太っていたな~」「なんだかズッシリ感がスゴイ」など感じたら、放置せず早めに食事管理を行いましょう。
なるべくなら、去勢・避妊手術した後すぐに、低脂肪・低カロリーフードを取り入れても良いかもしれません。早めに切り替えることで、猫に負担を掛けずに体重を維持することができます。
低脂肪・低カロリーのキャットフードを選ぶポイント
次は、実際に低脂肪・低カロリーのキャットフードに切り替える際の大事なポイントについてまとめます。
1.タンパク質が豊富に含まれているキャットフード
2.良質な脂肪が含まれているキャットフード
3.猫の胃腸に負担が掛からないキャットフード
それぞれについて詳しい説明をします。
猫は豊富なタンパク質が必要
猫が健康に長生きするには、豊富なタンパク質が必要です。猫は、肉食動物であり、肉や魚などのタンパク質を身体の中でアミノ酸に分解し吸収することで身体を作るからです。
また、分解されたアミノ酸は、身体を作る以外にも、身体を動かすためのエネルギーとして活用されます。というのも、人間は身体を動かすエネルギーとして炭水化物をブドウ糖に分解しますが、肉食動物の猫は、タンパク質をアミノ酸に分解して糖に変えることができるからです。
そのため、猫が生きるために必要となる栄養素は、ほぼタンパク質と言ってしまってもよいくらいです。それ以外は、身体のバランスを保つために、ミネラルやビタミン、脂肪が必要になります。炭水化物は、猫のウンチの量を増やすための食物繊維として、そこそこ必要になります。
猫が健康に過ごすために大切なタンパク質について、詳しくお話をしたいと思います。タンパク質は、消化されたあと、さまざまなアミノ酸に分解され、吸収されます。
アミノ酸には、いろんな種類がありますが、大きく分類すると、猫の身体の中で作り出せる「非必須アミノ酸」、身体の中で作り出せない「必須アミノ酸」の2つがあります。これにより、猫が毎日の食事で必須アミノ酸のもとになるタンパク質が必要になることがわかります。
また、猫が食べ物から摂取する必要のある必須アミノ酸は、10種類(バリン・ロイシン・イソロイシン・リジン・メチオニン・スレオニン・トリプトファン・フェニルアラニン・ヒスチジン・アルギニン)あります。
このアミノ酸を効果的に活用するためには、10種類それぞれがバランス良く準備されることが大事です。もし、9種類のアミノ酸だけ確保されていても、1種類のアミノ酸が不足していれば、身体への吸収されることなく、身体から排出されてしまうのです。
そうならないためにも、タンパク質が豊富なキャットフードが必要となります。
10種類の必須アミノ酸をバランスよく摂るためには、原材料欄をチェックしたときに、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、白身魚、青身魚、赤味魚などが最初に表示されているものを選ぶようにしましょう。
猫は良質な脂肪が必要
猫にとってタンパク質の次に大事な栄養素は「脂質」です。脂質は、猫が活動する際のエネルギーになったり、食物の中のビタミンA、D、E、Kなどを吸収したりする働きがあります。また、脂質を摂ることで、被毛がツヤツヤになり若々しく見えます。さらに、皮膚や粘膜に潤いを与え、細菌感染などから身体を守ります。
脂質にもさまざまな種類がありますが、猫が体内で合成できないため、食べ物から摂る必要のある必須脂肪酸は、リノール酸、α―リノレン酸、アラキドン酸です。
リノール酸は、ひまわり油・コーン油・大豆油など植物から作られる脂です。
α―リノレン酸は、海の食材に多く含まれています。海藻や植物プランクトンを食べた魚に多く含まれています。マグロやイワシなどの青魚に多く含まれるDHAやEPAなどの脂は、α―リノレン酸から作られます。
アラキドン酸は、卵や豚レバー、サバなど、動物性の食材に多く含まれています。
リノール酸、α―リノレン酸、アラキドン酸は、細胞の粘膜を強くし、細菌やウィルスから身体を守る働きがあり、猫の身体を若々しく保つために欠かせません。
もし、リノール酸、α―リノレン酸、アラキドン酸などが不足すると、フケが目立ったり、食欲が低下したり、身体の粘膜が乾燥したりします。毛の艶がなく、年齢よりも老けた印象になります。
カロリーを控えるときに、まず脂肪を減らすことを考えますが、脂質は猫の見た目、健康に大きくかかわる栄養素です。そのため、良質な脂質が入った低脂肪・低カロリーのキャットフードを選びましょう。
良質な脂質が含まれているか確認するには、原材料に、動物性、植物性の原材料が幅広く含まれているかどうかが目安になります。
猫の胃腸に負担がかからないもの
最後は、タンパク質、脂質が良質なキャットフードだったとしても、猫がスムーズに消化できるキャットフードかどうかが大事なポイントになります。
消化がスムーズ、つまり、猫の胃腸に負担がかからないものかどうかを見分けるには、「炭水化物の量」を確認すれば良いでしょう。
ほとんどのキャットフードには、炭水化物が含まれています。炭水化物は、植物繊維や糖質が含まれており、活動するときのエネルギーになったり、便通をスムーズにしたりというメリットもあります。
しかし、猫はタンパク質から糖を作ることができる動物なので、炭水化物を分解してできるブドウ糖はあまり必要としません。炭水化物が必要な要因をあげるとすれば、猫が毛繕いをして飲み込んだ毛を炭水化物に含まれる食物繊維が包んで、ウンチとして排出することぐらいでしょう。
もともと、猫が野生で生活していたときから、主食はタンパク質であり、炭水化物の割合は1割ほどだったので、消化に時間がかかります。猫の本来の食性に合わない食べ物を与えても、胃腸に負担を掛けるだけです。
最近は、炭水化物の量を控えたキャットフードの「穀物(グレイン)フリー」のものも多く販売されています。穀物(グレイン)フリーのキャットフードは、小麦、トウモロコシ、米が使用されていません。一方で、タンパク質の比率が高いのが特徴です。
低カロリー・低脂肪のキャットフードを探すときは、穀物(グレイン)フリーのものを選んであげましょう。猫のもともとの食性を生かしており、消化吸収に優れています。
低カロリー・低脂肪のおすすめキャットフード
世の中に多く出回っている、低カロリー・低脂肪ーのキャットフードの中で、肥満猫に適したキャットフードの条件についてお話をしてきました。ここからは、おすすめの低カロリー・低脂肪のキャットフードを紹介していきます。
アカナ パシフィカ
アカナは原材料に新鮮な肉・魚、果物、野菜が使われている穀物(グレイン)フリーのキャットフードです。「鶏肉中心のワイルドプレイリ―」「魚中心のパシフィカ」「牧草で育てた羊肉を使ったグラスランド」の3種類の味があります。
3種類の中で肥満猫におすすめするのは、魚をメインに使った「パシフィカ」でパッケージは以下の通りです。
原材料は以下の通りです。
良質なタンパク質について
パシフィカは、ニシン、イワシ、アブラカレイ、ニシンミール、タラミール、シロガネダラミールなど多種の魚をメインにしています。魚が豊富に使われている、タンパク質メインのキャットフードです。
パシフィカの特筆すべき箇所は、魚名の前に「新鮮丸ごと」という形容詞が付いている点です。
タンパク質を構成するアミノ酸にはたくさんの種類があります。もし、1種類の魚だけを使っていたり、魚の身体の特定の部位だけを使っていたりするキャットフードであれば、得られるアミノ酸は特定のものだけに限定されてしまいます。
そうなれば、猫にタンパク質の多いキャットフードを与えたとしても、実際には偏ったものしか与えていないことになり、結果栄養不足になってしまいます。
しかし、アカナのパシフィカは、多種の魚を丸ごと使っているキャットフードです。幅広いタンパク質を摂取することが出来るので、栄養不足になることはありません。
良質な脂質について
アカナに使われている青魚(サバ、ニシン)には、身体に良い不飽和脂肪酸が多く含まれています。
不飽和脂肪酸は食べ物から摂取しなければならない必須脂肪酸です。必須脂肪酸には、オメガ3とオメガ6がありますが、青魚(サバ、ニシン)に含まれているのはオメガ3の脂肪酸です。
オメガ3脂肪酸は、血管内の掃除をする効果があり、身体全体の血流がアップします。また、内臓の働きも良くなり、健康には欠かせません。
アカナの3種類のキャットフードに含まれるオメガ3脂肪酸の量を以下に比較してみました。
パシフィカ | ワイルドプレイリ― | グラスランド | |
オメガ3脂肪酸 | 2.2% | 0.9% | 1% |
オメガ6脂肪酸 | 2% | 2.9% | 2.5% |
表より、パシフィカに含まれるオメガ3脂肪酸が一番多く、他の味と比較して約2倍含まれていることがわかります。もし、3つの味のうちどれから食べさせようかと考えているなら、まずはパシフィカから試してみることをおすすめします。
すべての猫用【アカナキャット】
オリジン 6フィッシュ
オリジンもアカナと同様に新鮮な肉・魚、野菜、果物を原材料にした穀物(グレイン)フリーのキャットフードです。
オリジンは、「鶏肉・七面鳥中心のキャット&キティ」「魚を中心とした6フィッシュ」「ビーフ・ヤギ肉・羊肉などを中心としたレジオナルレッド」「鶏肉・魚をバランス良く含有したフィット&トリム」の4種類があります。
4種類の中でのおすすめは、「6フィッシュ」でパッケージは以下の通りです。
原材料は以下の通りです。
良質なタンパク質について
6フィッシュのタンパク質は、太平洋サバ、太平洋ニシン、大西洋カレイ、アカディアンレッドフィッシュ、太平洋アンコウ、シルバーヘイク、乾燥サバ、乾燥ニシン、乾燥アオギスが含まれています。
先に紹介した、アカナよりも多種な魚を丸ごと使用しており、タンパク質のクオリティの高さも保証されたキャットフードです。
良質な脂質について
6フィッシュの原材料はサバ、ニシンなどの青魚が中心です。青魚には、必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸が多く含まれています。
オメガ3脂肪酸は、身体に良い影響をもたらす善玉の脂肪酸です。あなたの猫が太り気味であれば、身体に良いオメガ3を多く含むオリジンの6フィッシュをおすすめします。
オリジンの4種類のキャットフードに含まれるオメガ3脂肪酸の量を以下に比較してみました。
6フィッシュ | キャット&キティ | レジオナルレッド | フィット&トリム | |
オメガ3脂肪酸 | 2.2% | 0.8% | 1.2% | 1.2% |
オメガ6脂肪酸 | 2% | 3.5% | 2% | 3% |
上記の表より、6フィッシュに含まれているオメガ3脂肪酸が一番多いです。肥満猫に対しては、6フィッシュをメインに与えてあげると良いでしょう。
オメガ3脂肪酸は、身体の掃除をする脂であるため、積極的に摂取した方が良いです。しかし、劣化しやすいというデメリットがあるため、開封したキャットフードは、必ず涼しい日陰の場所で保存するようにしましょう。
ロイヤルカナン 療法食満腹サポート
ロイヤルカナンはフランスのペットフード製造会社です。日本ではホームセンターやペットショップでおなじみのキャットフードです。一般向けのもの以外に療法食(りょうほうしょく)も販売しています。
あなたの猫の身体が太りぎみであれば、療法食のなかの「満腹サポート」を試してみるのも有効です。
実際のパッケージは以下の通りです。
満腹サポートはカロリーが低く作られています。食物繊維が多く、腹持ちの良いキャットフードです。
原材料は以下の通りです。
原材料を確認すると、腹持ちの良い理由の1つとして、「タピオカ」が含まれていることがわかります。タピオカとは、キャッサバ芋の根茎から作られるでんぷんのことです。
デザートドリンクの中に、タピオカを粒にしたものが入っています。もちもちした食感が特徴です。実際のものは、以下のとおりです。
タピオカブームということもあり、ご存知の方も多いと思います。肥満猫は、おねだりの頻度が多く、過食になりがちです。満腹感の継続する食事を与えたいと思う場合、「満腹サポート」は適した低脂肪・低カロリーキャットフードです。
最後に注意点として、「満腹サポート」は、療法食(りょうほうしょく)ということをお忘れなく。あなたの猫に与える際は、獣医師に相談し、必要であれば与えるようにしましょう。
低脂肪・低カロリーのキャットフードを与える場合の注意点
先ほど、紹介したキャットフードは、低脂肪・低カロリーのキャットフードです。今食べているキャットフードから徐々に移行し、2~3か月継続してみましょう。
キャットフードを与える際は、キャットフードの袋に記載の給与量を守りましょう。給与量は、猫に必要な栄養を摂るための目安です。勝手に量を調節して、減らすことの無いよう気を付けましょう。
猫に与えるキャットフードの量が減れば、一時的に体重を減らす事ができますが、猫の身体の筋肉量を減らしたり、栄養バランスが狂ったりして、猫に多大なストレスを与えることになります。猫の様子を観察しながら、気長にダイエットに取り組むようにしましょう。
まとめ
猫の肥満は、去勢・避妊手術後から徐々に始まります。手術後は、キャットフードの量をしっかり管理しましょう。決まった量を与えて猫が太っていくようなら、キャットフードの見直しが必要です。
その際に、低脂肪・低カロリーのキャットフードを選ぶようにしましょう。良い低脂肪・低カロリーキャットフードの条件は以下の3つです。
・良質なタンパク質が含まれているもの
・良質な脂質が含まれているもの
・穀物(小麦・トウモロコシ・米)グレインフリー
これらの条件が揃ったキャットフードを選ぶことで、肥満を避けることができます。肥満は、糖尿病や心疾患、関節炎のもとになります。あなたの猫が健康に過ごすためには、早い内からの体重管理、食事管理が重要です。